航空や鉄道の重大事故をめぐり、原因を究明する国の専門機関の運輸安全委員会と警察庁が、
事故原因の調査と警察の捜査との関係を見直す方向で合意したことが分かった。
警察はこれまで安全委の調査結果を捜査に活用してきたが、今後は捜査側が独自に事故原因を調べる手法を試行する。
警察の捜査は、遺族の処罰感情も考慮して個人の刑事責任追及に重きを置いてきた。
一方、航空関係者らは、安全対策が進んで機長ら個人の過失だけでは事故が起きる可能性は低い上、
個人の責任を追及すると原因調査と再発防止に悪影響を与えるとして異議を唱えてきた。
安全委と警察庁の合意によると、今後の事故に備え、安全委が警察に事故調査の専門家を紹介。
安全委の調査とは別に、独自に鑑定などを進める仕組みを試行する。
警察はこれまで、安全委に鑑定を依頼することで、同委がまとめた事故調査報告書を鑑定書として
刑事訴追の証拠に使ってきた。
今後も求めがあれば報告書を警察に渡すが、警察はそのまま証拠としては扱わないという。
欧米では機長らの刑事責任を免責した上で原因調査に協力させるケースが主流だ。
国際条約も原因調査の目的を「再発防止」に限り、捜査に使わないよう求めている。
だが、安全委の調査では対象者に黙秘権がないため、外国の航空会社などが報告書を元に
警察から刑事責任を追及されることをおそれ、安全委の調査に協力しない可能性がある。
前原誠司国土交通相(当時)が昨年8月、日航機墜落事故の追悼慰霊式で
「調査が優先されるような話し合いを行っていきたい」と表明。安全委は警察庁側と協議してきた。
原因調査と捜査の関係の見直しは、1974年に当時の航空事故調査委員会が旧運輸省に設けられてから初めて。
(永田工)
http://www.asahi.com/national/update/0414/TKY201104...
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